膝の屈曲トルクの増加とは、例えば下図のような状態です。

屈曲型姿勢1

二つの姿勢とも、膝関節の軸より上にある身体の重心(赤●)が膝関節より後ろに位置しているので、赤→のような回転力(屈曲トルク)が膝関節にかかっているのが分かります。

 

上図のような姿勢は大抵、年配の方に見られる姿勢だったのですが、最近では筋力の弱い若年者でも多く見られるようになってきて心配です。

それ以外にも、ぎっくり腰などになった人はこのような歩き方をしますが、体を膝で起こす(後傾させる)ことで背筋への負担を軽くしているのです。
つまり “腰への負荷を膝に肩代わりさせている” ということです。
理想的な直立位では、上体の重心が膝関節軸のほぼ真上にありますので、膝関節には屈曲トルクも伸展トルクも加わっていません。
ですから、体重60kgの人なら(膝より下の重量を除いた)おおよそ52kgくらいを両膝で受け止めている計算になります。

ところが、上図のように膝関節軸より重心が後方にある場合には、この52kgの重量だけでなく“膝屈曲トルクに対抗するための筋収縮力”が加わります。(下図)

膝の圧力 1
具体的にいいますと、
重心が膝関節軸より12㎝後方にある場合、膝関節軸から膝蓋骨までの距離は約4㎝程ですから膝伸筋群は三倍の力を必要とします。
したがって筋収縮は  52×3=156 kg(膝伸筋の収縮力)  これに52kgを加えた 計208 kg が両膝にかかる圧力になります。

 

僅かな姿勢の違いでこれほど膝への負担が変化するとは驚きですね。
走ったり跳んだりすれば更にこの何倍もの力が瞬間的に加わりますから、損傷の原因になるのは当然と言えるでしょう。

 

 

また、関節軟骨や半月板などの軟骨構造は、関節内の栄養分や保水・弾性成分などを含んだ液体(関節液)を、除圧された(圧力がかかっていない)ときに吸収し、圧力がかかるとそれを外へ出すことで健康な状態を保っています。

要するに、圧力の有無で呼吸しているようなものです。

ですから、圧迫力が強くかかり除圧される時間が短くなる屈曲型では、軟骨が薄く不健康になるので、より一層圧迫や衝撃に弱くなるわけです。

 

 

 

<屈曲型の主なボディメカニクス機能不全>

① 背筋・殿筋群やハムストリングスが、大腿四頭筋と比較して弱い。
② ハムストリングスが硬い。
③ 足の底屈筋群(特に後脛骨筋)が弱い。
④ 腰部の強い伸展制限(腰が丸まっている状態)

①~②は一般的な屈曲型。
③は外反母趾や足底筋膜炎などを伴っているケースが多いです。
④は老人性の特殊なケースですが、最近では若者にも多く見られるようになってきました。
<改善方法の例>

例えば①と②を同時に改善する方法を考えてみます。

これには、体正操法Basic12 第3セットMove1を少し変形させれば、より特化した形でストレッチと強化が出来ます。
この第3セットは元々、足首、膝、股関節の筋力バランスをテストして弱い部位を強化するために創られたものだからです。

 

具体的にどのようなものか紹介しておきましょう。

ハムストリングスストレッチ&強化

一段高い台などの上で手に重りを持って立ちます。(台の高さは低いものから徐々に慣らしていくのがよいでしょう。)(上図A)
重りをなるべく前上方の遠いところへ振り上げながら片足を一段下へ下ろします。
この時、台上側の膝は伸ばしたままです。(図B)

 

手は振り上げた位置から更に前上方へ伸ばしていきながら、足を元の台上に戻します。
この動作の間中、台上の膝は伸ばしたままです。

これを足を変えて両側行い、慣れれば台を徐々に高いものに変えていきます。
もう少しこの動作の解説を加えておきますと、ハムストリングスが硬い人は、ストレッチしようとしても骨盤が後傾して背骨が屈曲する傾向があります。(下図右)

ハムストレッチ図

こうなると十分にハムストリングスは伸ばされてまいません。

手を前上方に伸ばすという動作は、背骨を反らせる(伸展させる)動作と股関節を屈曲させる動作が連動していますので、上図左のような動きを誘導させる効果があります。
また、台を後ろ向きに降りる動作も、股関節の伸展可動域がもともと小さいことを利用して骨盤前傾を誘導するのに役立っています。

 

次回は、内反型についてお話する予定です。